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二、浮世草子と井原西鶴 ◼ やがて義理を重んずる武家物に移り、 かたき討ちの話を集めた『武道伝来記』 や武士道に縛られて生きる『武家義理 物語』を著した。晩年は再び町人社会に 戻り、才覚と倹約によって分限者となる 成功談の『日本永代蔵』、町人が大晦日 に借金が払えなくて苦しむ姿を描いた
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二、浮世草子と井原西鶴 ◼ これらは町人物と言われ、鋭い観察とリ アリズムは近代小説を見るごとくである。 雑話物としては『西鶴諸国ばなし』と『本 朝二十不孝』などがある
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二、浮世草子と井原西鶴 ◼ 『世間胸算用』――大晦日の攻防 ◼ 『世間胸算用』は元禄五年（1692）発表、 町人物の代表作である。 ◼ 流通経済が発達した近世日本社会では、 町人が富を得ることは用意ではなかった。 そんな社会事情を背景に、大晦日に借 金の返済に苦しむ町人の姿が描かれて いる
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二、浮世草子と井原西鶴 ◼ 現代と異なり、売買の勘定をすべて決済 する大晦日は、売り手・買い手の両方に とって、どう乗り切るかという血みどろの 攻防の日であった。売掛金を取り立てる 側と逃れようとする側が知恵を絞り、秘術 を尽くすさまが息づくように、ユーモラスに 描かれている。町人物は西鶴の浮世草 子の中で最も才能の発揮された作品であ る
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二、浮世草子と井原西鶴 ◼ 門の戸のなるたびに、女房がびくびくし てまだ帰らねませぬ。さいさい足を引か せましてかなしう御座ると、いずれにも 同じことわりいひて帰しける。程なく夜半 も過ぎ、あけぼのになれば、掛け乞いど も、ここ集まり、亭主はまだかまだかと、 恐ろしき声を立つる所へ、でっち大息つ きて帰り